わたしはあなたのなんなのだ

あの記事この記事、なんの記事?散逸した記憶の集合体。ニヒリズムの立場から論ず。

幻想小説「現状」 第一話

 非常にがっくし来ている、と、泡をぶくぶくやりながら僕は思った。

 

 一日に一回入る水槽の中に身を沈めて、今日は乳白色に水色を混ぜたような色だ、草津の湯、らしい、遠い群馬の地を思いやりながら、ニューヨーク。自分の身体はその色に隠されてみえないが、ちょっと上体を沈めると自然に膝頭が浮き上がる。出来の悪い温泉じゃがいもが2つ。そういえば、入試の出来が悪かったのだ、悪いのだ、ということを腹内に反復させると、別に落ちたのは屁でもないが、と屁をこき、その泡が浮かんで弾けるのを見届けて、国語の成績がえらく悪かったのはさすがにこたえたぜ、とぶくぶく。エラそうにエラそうな文章を各所に頼まれもせで書いている身としては、非常に恥ずかしい。恥ずかしすぎて、身を沈めたい。沈めると、膝頭の露出範囲が増える。もうしばらくすると、頭が沈むので膝頭も見えなくなる。このままでは窒息死してしまうので、ずぶんと上昇する。そういうことを思い出しながら、風呂上りの牛乳を片手に、あと2年でこれがビールになったりするのだろうか、その頃私は大学生かしら、そも生きてるのかしら、とか思いながら、パソコンの前に向かって、キーボードを叩いて、文字はずらずらと打ちこまれていくのに、画面の前の私は無口だわ、とか思うと、滑稽な感じもする。太ももがたくましい。これはたくましい太ももであるわけではない。太い。太くなければ太ももでなかろうか。細ももというのもまた一興か。ともかく、ともすれば肉屋の店頭に並んでいそうな太もも、これ切ってベーコンにしたら美味しいかしら、人間が人間の肉を食うと一種の狂牛病のような状態になるらしいと信頼できない筋から聞いた記憶。

 

 

2015 313