わたしはあなたのなんなのだ

あの記事この記事、なんの記事?散逸した記憶の集合体。ニヒリズムの立場から論ず。

「ニヒルの山」 最終回

 俺が手を伸ばして触れようとした瞬間、ものすごい風が吹き込んできた。風は部屋の中を最大限に荒らしまわり、二つの砂の山は雲散霧消し、目玉が風で悲鳴をあげる床に静かに転げ落ちた。そして建物全体がひっくりかえったかのようになって、俺は感覚を失った
 気がつけば、俺は公園の砂場につっぷしていた。見渡せば、平日の午後なのか人っ子ひとりいない。いや、ホームレスがいる。あれは俺じゃないだろうか。すると俺はいったい誰だ。それにしても体全体が寝すぎたように痺れている。感覚があまりない。しばらくぼーっとしていると、久方ぶりの尿意が、鮮烈な感覚を伴って俺を襲った。俺は、ああ、帰ってきたのだ、と悟ると、とりあえずはいつ以来かの能動的な欲望を満たすべく、公衆便所へと向かった。独特の臭いが鼻につく。鳥のさえずりが聞こえる。そして遠くから、誰かを運ぶバスの音が聞こえる。俺は救われた気がした。

おわり

2013 12 6